2014年04月14日

第3回将棋電王戦 第五局「屋敷伸之九段vsPonanza」

ついに最終局を迎えた電王戦。
現在コンピュータの3勝、人間の1勝と厳しい結果となっている中、
人間側の大将としてPonanzaと戦うのはA級棋士の屋敷伸之九段です。

先手となった屋敷九段は居飛車党ですので、
居飛車vs振り飛車の対抗形か相居飛車の戦いということになりそうです。

屋敷九段の初手は▲2六歩。まさに居飛車党といった一手です。
対してPonanzaは△8四歩で堂々と相居飛車を受けて立ちました。

その後序盤に微妙な駆け引きがありましたが、
結果的には横歩取りの定跡形に落ち着きました。

16手目の△3三角(イ図)がプロ棋戦でも最も指されている形です。

(イ図)

そこで先手は▲3六飛と引くのが普通ですが、
屋敷九段は▲5八玉とされました。

これは青野流と呼ばれる指し方で近年流行した形です。
この戦法には3六飛〜2六飛の2手を省略して一気に攻めつぶそうという狙いがあります。

それに対するPonanzaの応手は△6二玉。
これは第三局でYSSも指した手です。
横歩取りの後手番での△6二玉はコンピュータにとっては普通なのでしょうか。

後手の玉形は昔では4一玉の中原囲いが定番でしたが、
3筋の当たりが強い(戦場に近い)ということで近年では△5二玉型が流行っています。

先手は9筋の位を取り、後手は先手の飛車をいじめる方針で指し手が進みました。
そして34手目△4三金(ロ図)でついに先手の飛車の行き場がなくなり、
飛車交換が必須の形になりました。

(ロ図)

そこから44手目△1九飛成までは一直線の変化と予想されており、その通りに進行しました。
先手は早くも香損しているため、ゆっくりはしていられません。
ここで先手がどう攻めていくのかが非常に注目されていましたが、
屋敷九段は▲7四歩(ハ図)と玉頭を攻める手を選びました。

(ハ図)

現地の検討では▲9四歩以下の変化を深く検討していて、
かなり難しく形勢は互角と見られていましたが、
屋敷九段は▲9四歩は入らないと読んでいたのでしょう。

成られたらたまらないので△同歩の一手ですが、
これで角が5五に出たときの攻めのラインが通りました。

すかさず▲5五角に△8二歩が堅い受け。
そして▲5五角には玉頭以外にも秘めた狙いがありました。
それは▲2五桂(ハ図)が1九の龍取りになることです。

この手が龍角両取りのような手になります。
しかし、4九龍〜2五金と手を戻され、駒割りは飛車と金桂香の3枚換えとなってしまいました。
△4九龍は王手ですから手抜きできません。
このように王手で駒を取られる筋で駒損になることはよくありますから、注意が必要ですね。

(ハ図)

手を戻された後の手で大盤解説では▲6八銀(参考イ図)で先手が指せそうだという評判でした。
駒は損していますが、飛車2枚と端攻めの権利が大きいと見られていたようです。

(参考イ図)

しかし、屋敷九段はもっと攻め気の強い手を選択しました。
それは▲6五桂です。

これは△5四金と打たれると跳ねた桂馬をすぐに取られてしまうわけですが、
金を打ってくれるなら十分だと見ていたようですね。

Ponanzaはコンピュータらしく確実に駒得する△5四金を選び、
これで駒割りは飛車と金桂香香の4枚換えです。

桂を取らせはしましたが、これで手番が回り待望の反撃57手目▲9四歩。
△同歩ならば▲9二歩〜9一飛が受けづらいです。

ということで後手は手抜きで△4五桂、先手は玉頭と受けつつ逃げ道を確保する▲6八銀と指しました。
ここでPonanzaに驚きの手が出ます。

それは△1六香です。
一瞬「何それ」という言葉が頭をよぎりますが、
これの狙いは先手の角を"詰ます"ことです。

かなりの駒得なので大駒を取れば優位を拡大できるという判断ですね。
そして70手目△5四桂(二図)で見事に11手で角を詰むことに成功しました。

(二図)

ただ大事な金をそっぽにやった上、桂香の持ち駒まで使ってますから、
人間的には筋悪の汚名は免れない手順と言えますね。

解説や検討では玉頭を攻める手ばかり調べていたため、
プロの方々はこの手順には驚きを隠せなかったようです。



角を手にいれたPonanzaは角の援護のもと成香をひたひたと寄せていきます。

そしてまたしてもプロを驚かせる手が出ます。
88手目△7九銀(ホ図)。

(ホ図)

先手玉はただでさえ上部に逃げようとしているところですから、
お手伝いと言ってもおかしくないような手に見えます。

ただ9筋に歩を連打して押さえ、それから△6八成香が確実な迫り方です。

とはいえ、これで後手も持ち駒がなくなり、攻めがかなり細い上に先手玉に詰めろがかからない状況です。
ここは先手が最後のチャンスを得た局面でした。

先手は8筋に香車を打ち、さらに銀も打つことで上部を安全にしました。
その代わり後手玉も中段へ逃げ込み捉えづらくなりましたね。

ここまで本当にギリギリの難しい勝負だったのですが、遂に屋敷九段に失着が出てしまいます。
103手目で▲8一成香としたのですが、すかさず△8三歩(ヘ図)でシビレてしまいました。
これは同銀だと△9五金と押さえられ、寄せきられる可能性が高いです。
かといって取れないとすれば、逆に歩で銀を取られてしまいます。

(ヘ図)

この局面で8一の桂取りは価値の高い手とは言えませんでしたね。
変えて▲4九飛(参考ロ図)と打ち、攻め駒を攻めて後手の攻めを弱体化させる順が有力だったようです。

(参考ロ図)

ちなみに我が家のBonanza_6.0で検討した結果、この手のあと先手が(評価値的に)逆転勝ちしました。

銀を取られたものの屋敷九段も龍を作り粘りましたが、
以降はPonanzaに正確に寄せられ、最後は即詰みに討ち取られてしまいました。

(終局図は130手目△9四銀まで)

ということで、大熱戦の結果惜しくも屋敷九段が敗れ、
電王戦はコンピュータの4勝、人間の1勝ということで幕を閉じました。


今回の電王戦でも様々ドラマや素晴らしい戦いが見ることができましたね。
また電王戦が開かれるかは未定とのことですが、
ぜひコンピュータと人間の「共存共栄」関係が出来ていけば良いなと思います。

電王戦はまだまだ将棋には未知の部分がたくさんあることを感じた戦いでした。

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┗第3回将棋電王戦 第四局「屋敷伸之九段vsPonanza」



参考棋譜「棋譜でーたべーす」より

開始日時:2014/04/12 10:00
消費時間:130▲300△291
棋戦:第03回電王戦第5局

場所:東京・将棋会館

持ち時間:5時間

手合割:平手

後手:ponanza
先手:屋敷伸之
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27)
2 8四歩(83)
3 2五歩(26)
4 8五歩(84)
5 7六歩(77)
6 3四歩(33)
7 7八金(69)
8 3二金(41)
9 2四歩(25)
10 同 歩(23)
11 同 飛(28)
12 8六歩(85)
13 同 歩(87)
14 同 飛(82)
15 3四飛(24)
16 3三角(22)
17 5八王(59)
18 6二王(51)
19 3六歩(37)
20 7二王(62)
21 3七桂(29)
22 7六飛(86)
23 7七角(88)
24 7五飛(76)
25 9六歩(97)
26 4二銀(31)
27 9五歩(96)
28 2六歩打
29 3八銀(39)
30 4四歩(43)
31 6六角(77)
32 8五飛(75)
33 8七歩打
34 4三金(32)
35 7七桂(89)
36 1五飛(85)
37 1六歩(17)
38 3四金(43)
39 1五歩(16)
40 2七歩成(26)
41 同 銀(38)
42 2九飛打
43 3八銀(27)
44 1九飛成(29)
45 7四歩打
46 同 歩(73)
47 5五角(66)
48 8二歩打
49 2五桂(37)
50 4九竜(19)
51 同 銀(38)
52 2五金(34)
53 6五桂(77)
54 5四金打
55 1九角(55)
56 6五金(54)
57 9四歩(95)
58 4五桂打
59 6八銀(79)
60 1六香打
61 2八角(19)
62 1八香成(16)
63 3九角(28)
64 2九成香(18)
65 1七角(39)
66 1六金(25)
67 3五角(17)
68 3四歩打
69 4六角(35)
70 5四桂打
71 9三歩成(94)
72 4六桂(54)
73 同 歩(47)
74 3九成香(29)
75 8三と(93)
76 同 王(72)
77 9一香成(99)
78 4九成香(39)
79 4五歩(46)
80 1五角(33)
81 6九王(58)
82 4七角打
83 7九王(69)
84 5九成香(49)
85 8八王(79)
86 6九成香(59)
87 7七銀(68)
88 7九銀打
89 9七王(88)
90 9六歩打
91 同 王(97)
92 9五歩打
93 同 王(96)
94 9四歩打
95 9六王(95)
96 6八成香(69)
97 8六香打
98 7三王(83)
99 7九金(78)
100 同 成香(68)
101 8四銀打
102 6四王(73)
103 8一成香(91)
104 8三歩(82)
105 9三飛打
106 8四歩(83)
107 9四飛成(93)
108 5九角成(15)
109 6八桂打
110 7二銀(71)
111 8二成香(81)
112 6九角成(47)
113 7六銀(77)
114 6八馬(59)
115 6五銀(76)
116 同 王(64)
117 6六金打
118 5四王(65)
119 8四竜(94)
120 7三銀打
121 9五竜(84)
122 8四桂打
123 8五王(96)
124 8二銀(73)
125 5五金(66)
126 同 王(54)
127 5六飛打
128 6四王(55)
129 8四竜(95)
130 9四銀打
131 投了
まで130手で後手の勝ち
posted by Justice at 01:00| Comment(0) | 第3回将棋電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする