2014年05月28日

第72期名人戦 第四局 「羽生挑戦者、驚異の名人位ストレート奪取」

羽生挑戦者の3連勝で迎えた第4局、
森内名人が意地を見せられるか、それとも羽生挑戦者がストレート奪取を決めるか、
非常に注目の一局となりました。

先手が羽生挑戦者、後手が森内名人です。
戦型は第1局、第2局と同じ相がかりとなりました。

先手は2筋の歩を交換し、▲2八飛と引き、銀を2七に進出。
今現在相がかりで最も多い引き飛車棒銀を選択しました。

後手はこのタイミングで8筋の歩交換をし、飛車を8五に引きます(イ図)。
これが最新の引き棒銀対策となっています。

飛車を5段目におくことで先手の急戦を牽制しています。

(イ図)

そこから後手は反撃の体制を築き、
先手は▲4六歩(ロ図)と突いて4五銀や4七銀と選択の幅を広げました。

(ロ図)

後手は自ら各交換をし、△3三桂(ハ図)と跳ねることで先手の銀が進めないようにしました。
この作戦は先手の銀の進出を阻む意味では確実な手法ですね。



(ハ図)

そこから数手進み、先手は▲5六角(ニ図)と筋違い角を打ちました。
この手は3四の歩取りと同時に後手の7三桂の頭を間接的に睨んでいます。
本局の焦点はこの角が活きるかどうかにかかっていそうですね。

(ニ図)

後手は△2四歩と突き、わざと歩を取らせることで△2三銀から銀冠に囲いを発展させました。
一歩損なのですが、銀冠もしっかりした囲いですし、先手は角を手離しているため、
局面としては均衡が保たれていそうですね。

そこからはお互い自陣を整備し、51手目▲2五歩(ホ図)で先手が本格的に仕掛けました。
もたついていると後手から6五歩〜7五歩などの攻めがあるため、
良い仕掛け時だったのかもしれません。

(ホ図)

△2五同歩に▲2四歩と打つのが継続手段で、△同銀とさせて▲3四角と出ました。
次に先手は1四歩〜1二歩と香車を取る手があるため、後手は△2二金とその筋を受けます。

そこで先手は▲1七桂と跳ねました。この戦型では先手の銀が3六にいるため、
右桂が使えない(3七桂がない)のが難点なのですが、今回は端桂から活用を図りました。

後手は3五歩として先手の攻めを抑え込みに行きますが、
▲2五銀、△同桂、▲同角(へ図)が面白い攻め筋です。

(ヘ図)

先手は角銀交換で駒損になってしまいそうですが、
角ではなく桂馬でいくと攻めの継続が難しくなってしまいますし、
後手には3四桂のキズ(王手金取り)があるため、簡単には角を取ることができません。

そこで△3三金が受けの形、桂打ちを消しつつ銀にヒモをつけました。
先手はここで▲4七角と生還、後手は△3六歩と突き捨ててから△2六歩(ト図)と打ちました。
この手がなかなかの手で、同飛車とすると3五銀打で飛車角両取りをかけられます。
さすが受けの名手と呼ばれる森内名人といったところでしょうか。

(ト図)

ただの歩が取れないので先手はじっと▲4七角と引いて当たりを避けます。
そこで森内名人の反撃開始です。

△9五歩、▲同歩に△6五歩。
後手は角銀を手持ちにしているため攻めに困らない恰好ですので、
先手も安易に▲6五歩とは取れません(△同桂以下攻め込まれる恐れがある)。

そこで▲2三歩(チ図)がプロ好みの一手ですね。
▲2二歩成を見せ、△同金とさせることで▲2六飛の時に△2三歩と後手から打たれる手を消しています。
いわゆる格言の「敵の打ちたいところに打て」ですね。

(チ図)


実戦も△同金に▲2六飛と進み、後手は△6六歩と取り込みました。
取ると△4四角で飛車銀両取りなので取れません。
また放っておくと△6七銀の打ち込みもあるため、先手忙しい局面ですね。

対して先手は▲5六角と出ました。先の2三歩の効果でこの角が金に当たっているんですね。
強い人ほど歩の使い方に秀でています。

(リ図)

後手の△2二歩は最も手堅い受けですね。
先手は6筋の良い受けもないので▲3六桂と攻めます。

△3五銀と逃げれば▲2三角成、△同歩、▲同飛車で龍を作ることができます。
▲2三角成が▲4一金の詰めろのため後手は飛車を取れないんですね。

後手は△6五銀、▲4五角の交換を入れて△3五銀と逃げました。
そこで先の説明通りに先手は▲2三角成から龍を作りました。

ここで後手玉は詰めろではないですが、角を渡すと詰むほか▲2一龍が詰めろになるなど、
大変危険な状態です。

そこで後手は△5四歩と上に脱出路を作りました。
先手は▲6四歩(ヌ図)と垂らして手を渡します。
後手は上がった瞬間に▲6三金とされるため玉が上がりづらい格好です。
こういったの手渡しは羽生挑戦者の得意とするところですね。

(ヌ図)


かなり手の広い局面でしたが、ここで後手は△1二角と最も強気な手を選択しました。
この手を選ぶとかなり一直線に詰むや詰まざるやの変化に突入します。

▲2二龍、△3二歩、▲1一龍、△6七銀(ル図)

後手は打った角をすぐに取られるのですが、△6七銀を詰めろで打つことができます。

(ル図)

ここで先手は▲4一金(ヲ図)と打ちました。
この手はちょっと重そうで狙いのわかりづらい手なのですが、
後の変化ですごい狙いを秘めた手でした。

(ヲ図)

△5三玉に▲1二龍。
△3四角が詰めろ龍取りです。

▲4五角に△8七飛成(ワ図)が後手の勝負手。
いろいろと手がある中で最も激しい手ですね。
意味としては▲同金に△1二角が△7八飛以下の詰めろになるということです。

(ワ図)


そこで後手は▲8八玉と早逃げしました。
後手は△4五角、▲同歩と手駒を増やし、△7八飛、▲9七玉に△5八飛成と△9六歩以下の詰めろをかけました。

ここで先の▲4一金の真の狙いが分かります。
この局面で▲4二角(カ図)が絶妙手。

(カ図)

△同金には▲6三飛以下の詰みがあるため取れず、後手は6四の地点にも逃げることができません。
さらに△6二玉、▲8二飛、△7一玉、▲8六香(ヨ図)が詰めろ逃れの詰めろとなり、
これで一気に先手勝ちになってしまいました。

(ヨ図)

こういった展開まで読んでの▲4一金だったとしたら脱帽ですね。

後手は勝ち筋がすべて消えてしまったので形作りに△4二金と角を取りましたが、
▲8一飛成以下即詰みとなりました。


(終局図 111手目▲8一飛成 まで)

ということで111手目▲8一飛成にて先手の羽生挑戦者が勝ち、
4連勝のストレートで名人位奪取を決めました。

この復位で羽生名人は通算8期目の名人位となります。
これは森内前名人と並び歴代3位タイとなるようです。

棋界のゴールデンカードが激突した名人戦でしたが、
後手番で羽生挑戦者が上手く指された印象が強いですね。

お二人はこのあと棋聖戦でも戦われることになり、
また熱い勝負をぜひみたいですね。

過去の対局はこちらからどうぞ
>>第一局
>>第二局
>>第三局




参考棋譜「棋譜でーたべーす」より

開始日時:2014/05/20 9:00
消費時間:111▲492△539
棋戦:第72期名人戦七番勝負第4局

持ち時間:9時間

手合割:平手

後手:森内俊之
先手:羽生善治
手数----指手---------消費時間--
1 2六歩(27)
2 8四歩(83)
3 2五歩(26)
4 8五歩(84)
5 7八金(69)
6 3二金(41)
7 2四歩(25)
8 同 歩(23)
9 同 飛(28)
10 2三歩打
11 2八飛(24)
12 9四歩(93)
13 9六歩(97)
14 7二銀(71)
15 3八銀(39)
16 3四歩(33)
17 2七銀(38)
18 8六歩(85)
19 同 歩(87)
20 同 飛(82)
21 8七歩打
22 8五飛(86)
23 7六歩(77)
24 7四歩(73)
25 3六銀(27)
26 7三桂(81)
27 4六歩(47)
28 8八角成(22)
29 同 銀(79)
30 2二銀(31)
31 6八王(59)
32 6四歩(63)
33 5八金(49)
34 3三桂(21)
35 1六歩(17)
36 4二王(51)
37 1五歩(16)
38 6三銀(72)
39 5六角打
40 2四歩(23)
41 同 飛(28)
42 2三銀(22)
43 2八飛(24)
44 2四歩打
45 7七銀(88)
46 5二金(61)
47 6六歩(67)
48 8四飛(85)
49 7九王(68)
50 5四銀(63)
51 2五歩打
52 同 歩(24)
53 2四歩打
54 同 銀(23)
55 3四角(56)
56 2二金(32)
57 1七桂(29)
58 3五歩打
59 2五銀(36)
60 同 桂(33)
61 同 角(34)
62 3三金(22)
63 4七角(25)
64 3六歩(35)
65 同 角(47)
66 2六歩打
67 4七角(36)
68 9五歩(94)
69 同 歩(96)
70 6五歩(64)
71 2三歩打
72 同 金(33)
73 2六飛(28)
74 6六歩(65)
75 5六角(47)
76 2二歩打
77 3六桂打
78 6五銀(54)
79 4五角(56)
80 3五銀(24)
81 2三角成(45)
82 同 歩(22)
83 同 飛成(26)
84 5四歩(53)
85 6四歩打
86 1二角打
87 2二竜(23)
88 3二歩打
89 1一竜(22)
90 6七銀打
91 4一金打
92 5三王(42)
93 1二竜(11)
94 3四角打
95 4五角打
96 8七飛成(84)
97 同 金(78)
98 1二角(34)
99 8八王(79)
100 4五角(12)
101 同 歩(46)
102 7八飛打
103 9七王(88)
104 5八飛成(78)
105 4二角打
106 6二王(53)
107 8二飛打
108 7一王(62)
109 8六香打
110 4二金(52)
111 8一飛成(82)
112 投了
まで111手で先手の勝ち
posted by Justice at 21:00| Comment(2) | プロ棋戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする